FX取引を始めたばかりの時、「いつ買って(エントリー)、いつ売れば(決済)いいのか分からない」
「FXの手法と聞くけれど、種類が多すぎてどれを選べばいいか迷ってしまう」
といった悩みを抱えていませんか?
FX(外国為替証拠金取引)で安定して利益を目指すトレーダーは、例外なく自分なりの手法(取引ルール)を持っています。感覚的な取引を避け、一貫したルールに基づいて売買することが、長期的に市場で生き残るための鍵となります。
この記事では、FX初心者の方に向けて、以下の点を網羅的に解説します。
- FXにおける「手法」の基本的な考え方
- 主要な「取引手法」(順張り・逆張り)の種類
- ライフスタイルに合わせた「取引スタイル」(デイトレードなど)
- 相場分析の「方法」(テクニカル分析・ファンダメンタルズ分析)
- 初心者でも始めやすいシンプルなFX手法の具体例
- 手法を活用する上でのリスクや注意点
本記事を読めば、FXの手法に関する基本的な知識が身につき、自分に合った取引ルールを作るための第一歩を踏み出すことができるでしょう。
FXの「手法」とは?取引における自分だけのルール
そもそもFXにおける「手法」とは、「どのような状況で買い、どのような状況で売るか」を定めた一貫性のある取引ルールのことを指します。
例えば、「移動平均線がこうなったら買う」「含み損がこれだけ出たら損切りする」といった具体的なルールの集合体が「手法」です。
FXで手法(取引ルール)を持つことの重要性
初心者が陥りがちな失敗は、「なんとなく上がりそうだから買う」「価格が急落して怖いから売る」といった感情的な取引をしてしまうことです。
相場の値動きに一喜一憂していては、合理的な判断ができず、損失を重ねてしまう可能性が高くなります。
明確な手法(ルール)を持つことで、以下のようなメリットがあります。
- 感情を排除できる ルール通りに売買するだけなので、冷静な判断がしやすくなります。
- 再現性が生まれる なぜ勝てたのか、なぜ負けたのかを後から分析(検証)できます。
- 取引を改善できる 検証結果に基づいてルールを改善し、手法の精度を高めていくことができます。
手法とは、FXという先の読めない相場を航海するための「羅針盤」のようなものだと考えましょう。
手法を構成する3つの主要素
一般的に「FXの手法」という言葉は、以下の3つの要素を組み合わせて作られています。
- 取引手法(売買の方向性) 相場の流れに対して「順張り」で乗るか、「逆張り」で反転を狙うか。
- 取引スタイル(時間軸) 1回の取引を数秒で終えるか、数週間保有するか。
- 分析方法(判断の根拠) チャート(テクニカル分析)を重視するか、経済ニュース(ファンダメンタルズ分析)を重視するか。
まずはこの3つの要素を理解し、自分に合った組み合わせを見つけていくことが必要です。
FXの基本的な2つの取引手法
FXの取引手法は、大きく分けて「順張り(トレンドフォロー)」と「逆張り(カウンタートレード)」の2種類があります。
トレンドフォロー(順張り) 相場の流れに乗るシンプルな方法
順張り(じゅんばり)とは、相場の大きな流れ(トレンド)と同じ方向にエントリーする手法です。「価格が上昇している時に買い、下降している時に売る」というシンプルな考え方です。
- メリット
トレンドが発生している相場では、大きな利益(値幅)を狙いやすい。
相場の勢に乗るため、比較的勝率が安定しやすい。 - デメリット
トレンドの終わり(転換点)や、トレンドがない「レンジ相場(※)」では機能しにくい。
高値掴み(上昇トレンドの終盤で買ってしまう)や、安値掴み(下降トレンドの終盤で売ってしまう)のリスクがある。
(※)レンジ相場:価格が一定の範囲(レンジ)を行ったり来たりしている状態。
カウンタートレード(逆張り) 相場の反転を狙う方法
逆張り(ぎゃくばり)とは、トレンドとは逆の方向にエントリーする手法です。
「価格が下がりすぎたら買い、上がりすぎたら売る」という、相場の反転を狙う考え方です。
- メリット
価格が反転するタイミングを正確に捉えられれば、最も有利な価格でエントリーできる(安く買って高く売る、または高く売って安く買い戻す)。
レンジ相場で有効な手法が多い。 - デメリット
トレンドが継続した場合、大きな損失につながる「コツコツドカン」のリスクがある。
相場の反転ポイントを見極めるのが難しく、初心者には難易度が高い。
初心者はどちらの手法を選ぶべき?
FX初心者には、まず「順張り(トレンドフォロー)」の手法から学ぶことをおすすめします。
逆張りは、相場の流れに逆らうため、失敗した時の損失が大きくなりやすいです。
一方、順張りは相場の流れに乗るため、エントリーのタイミングが多少ずれても利益につながる可能性があります。
「Trend is Friend(トレンドは友達)」という相場格言がある通り、まずは明確なトレンドを見つけ、その流れに乗る取引を心がけましょう。
取引期間で選ぶ4つの取引スタイル(トレードスタイル)
FXの手法は、1回の取引(エントリーしてから決済するまで)にかける時間(期間)によって、4つのスタイルに分類されます。
スキャルピング(超短期売買)
- 取引期間 数秒〜数分
- 特徴 1日に何度も売買を繰り返し、小さな利益(数pips程度)をコツコツと積み重ねるスタイル。
- メリット
ポジション保有時間が短いため、相場の急変動リスクに巻き込まれにくい。
取引チャンスが多い。 - デメリット
常にチャート画面に張り付いている必要がある。
高い集中力と素早い判断が求められる。取引回数が多いため、スプレッド(売買コスト)がかさみやすい。
スキャルピング(超短期売買)
- 取引期間 数秒〜数分
- 特徴 1日に何度も売買を繰り返し、小さな利益(数pips程度)をコツコツと積み重ねるスタイル。
- メリット
ポジション保有時間が短いため、相場の急変動リスクに巻き込まれにくい。
取引チャンスが多い。 - デメリット
常にチャート画面に張り付いている必要がある。高い集中力と素早い判断が求められる。
取引回数が多いため、スプレッド(売買コスト)がかさみやすい。
デイトレード(短期売買)
- 取引期間 数分〜1日
- 特徴 その日のうちにエントリーから決済までを完了させ、翌日にポジションを持ち越さないスタイル。
- メリット
ポジションを持ち越さないため、寝ている間に大きな相場変動が起きるリスク(オーバーナイトリスク)を避けられる。1日の終わりに損益が確定するため、精神的な負担が少ない。 - デメリット
日中(特に市場が活発な時間帯)に取引する時間が必要。
1日で決済するため、大きなトレンドが発生しても利益が限定的になることがある。
スイングトレード(中長期売買)
- 取引期間 数日〜数週間
- 特徴 比較的大きなトレンドを狙い、数日単位でポジションを保有するスタイル。
- メリット
一度エントリーすれば、頻繁にチャートを確認する必要がない。
日中は仕事で忙しい会社員や主婦の方にも向いている。
1回の取引で大きな利益を狙える可能性がある。 - デメリット
ポジションを翌日以降に持ち越すため、オーバーナイトリスクを負う必要がある。
デイトレードなどに比べ、取引チャンスが少なくなる。
スワップポイント(金利差調整分)の支払いがコストになる場合がある。
ポジショントレード(長期売買)
- 取引期間 数週間〜数ヶ月、あるいは数年
- 特徴 為替レートの長期的な変動や、2国間の金利差(スワップポイント)を狙って、長期間ポジションを保有するスタイル。
- メリット
日々の細かな値動きに一喜一憂する必要がない。
ファンダメンタルズ分析に基づいた、どっしりとした投資が可能。 - デメリット
相応の資金量が必要になることが多い。
価格が逆行した場合、大きな含み損を抱えるリスクがある。
利益が出るまでに非常に長い時間がかかる。
【ライフスタイル別】初心者におすすめの取引スタイルは?
どのスタイルが最適かは、あなたのライフスタイルや性格によって異なります。
- 日中チャートを見られる人 デイトレード
- 仕事や家事で忙しい人 スイングトレード
- 瞬時の判断が得意な人 スキャルピング
- じっくり長期で考えたい人 ポジショントレード
FX初心者で、特に日中忙しい方には「スイングトレード」、または夜の決まった時間だけ取引する「デイトレード」から始めることをおすすめします。
まずは自身の生活リズムの中で、無理なく続けられるスタイルを見つけることが重要です。
FX相場を予測する2つの分析方法
取引の根拠となる相場分析の方法は、主に「テクニカル分析」と「ファンダメンタルズ分析」の2種類です。
テクニカル分析 過去のチャートパターンから未来を予測する
テクニカル分析とは、過去の為替レートの値動きをグラフ化した「チャート」を分析し、将来の値動きを予測する方法です。
世界中のトレーダーが同じチャートを見ているため、「このパターンが出たら買われやすい」「この価格帯は意識されやすい」といった、投資家心理のパターンがチャート上に現れます。
- 代表的な指標 移動平均線、ローソク足、MACD、RSI、ボリンジャーバンドなど。
- メリット
チャートさえあれば、専門的な経済知識がなくても分析できる。
売買のタイミング(エントリー・決済)を視覚的に判断しやすい。
短期〜中期の取引スタイルと相性が良い。 - デメリット
突発的なニュースや経済指標の発表による急変動は予測できない。
指標(インジケーター)の種類が多く、どれを使えばいいか迷いやすい。
ファンダメンタルズ分析 経済指標やニュースから予測する
ファンダメンタルズ分析とは、各国の経済状況や金融政策、政治情勢などのニュース(経済指標)を分析し、中長期的な為替の方向性を予測する方法です。
- 代表的な指標 各国の政策金利、GDP(国内総生産)、雇用統計(米国の雇用統計など)、物価指数など。
- メリット
為替レートが動く「根本的な理由」を理解できる。
相場の大きなトレンド(長期的な流れ)を把握するのに役立つ。
ポジショントレードなど長期投資に不可欠な分析方法。 - デメリット
経済や金融に関する幅広い知識が必要。
良いニュースが出ても、必ずしも価格が上昇するとは限らない(市場に織り込み済みの場合など)。
短期的な売買タイミングを判断するには不向き。
FX初心者はテクニカル分析から学ぶべき理由
FX初心者は、まず「テクニカル分析」から学ぶことを強くおすすめします。
ファンダメンタルズ分析は情報収集や経済の理解に時間がかかりますが、テクニカル分析はチャートのパターンを覚えることから始められます。
「いつ買うか」「いつ売るか」という具体的な売買タイミングを判断する上で、テクニカル分析は非常に強力な武器となります。
まずは、後述するシンプルなテクニカル指標の使い方からマスターしていきましょう。
テクニカル分析を使った代表的なFX手法3選【初心者向け】
テクニカル分析には無数の指標がありますが、初心者はまずシンプルで代表的なものから試してみましょう。
ここでは3つの基本的な手法を紹介します。
手法①:移動平均線(ゴールデンクロス・デッドクロス)
移動平均線(Moving Average)は、一定期間の価格の平均値を結んだ線で、トレンドの方向性を判断するのに最もよく使われる指標です。
- 基本的な見方
価格(ローソク足)が移動平均線より上にあれば「上昇トレンド」
価格(ローソク足)が移動平均線より下にあれば「下降トレンド」 - シンプルな売買手法(ゴールデンクロス・デッドクロス)
ゴールデンクロス(買いサイン): 短期の移動平均線が、長期の移動平均線を下から上に突き抜けるパターン。
強い上昇トレンドの発生を示すと考えられます。
デッドクロス(売りサイン): 短期の移動平均線が、長期の移動平均線を上から下に突き抜けるパターン。
強い下降トレンドの発生を示すと考えられます。
手法②:ローソク足(プライスアクション)
ローソク足は、一定期間の「始値・高値・安値・終値」を1本のローソク型で示したものです。
世界中で最も多く使われているチャート形式であり、ローソク足の形自体から市場参加者の心理を読み解くことができます。
- 基本的な見方
陽線: 終値が始値より高い(価格が上昇した)
陰線: 終値が始値より安い(価格が下落した)
ヒゲ: 高値や安値を示し、長いほどその方向への抵抗が強かったことを示す。 - シンプルな売買手法(例:包み足)
買いサイン(強気の包み足) 直前の陰線を、次の陽線が完全に包み込む(始値・終値ベースで)パターン。
下降勢いが終わり、強い上昇に転じる可能性を示します。
売りサイン(弱気の包み足) 直前の陽線を、次の陰線が完全に包み込むパターン。上昇の勢いが終わり、強い下降に転じる可能性を示します。
手法③:レンジ相場での逆張り(RSI・ストキャスティクス)
移動平均線がトレンド相場に強い一方、レンジ相場(価格が行ったり来たりする相場)で役立つのが「オシレーター系」と呼ばれる指標です。
代表的なオシレーターであるRSIやストキャスティクスは、「現在の価格が買われすぎか、売られすぎか」を数値で示してくれます。
- シンプルな売買手法(逆張り)
買いサイン 指標の数値が「売られすぎ」とされるライン(例:RSIで30以下)に達したら、反発上昇を狙って「買い」を検討する。
売りサイン 指標の数値が「買われすぎ」とされるライン(例:RSIで70以上)に達したら、反落を狙って「売り」を検討する。
注意点 オシレーター系の指標は、強いトレンドが発生している相場では「買われすぎ(売られすぎ)」のラインに張り付いたまま機能しなくなることがあります。あくまでレンジ相場での逆張りに使うのが基本です。
FXで自分に合った勝てる手法を見つけるコツ
ここまで様々な手法の種類やスタイルを紹介しましたが、大切なのは「自分に合った手法」を見つけることです。
以下のステップで自身の手法を確立していきましょう。
まずはデモトレードで手法を試す
いきなり自分のお金(リアルマネー)で取引を始めると、損失への恐怖から冷静な判断ができなくなります。
ほとんどのFX会社が提供している「デモトレード(無料の仮想取引)」を活用し、気になる手法をノーリスクで試してみましょう。
少額取引から始める
デモトレードで操作に慣れ、手法の感覚を掴んだら、次は「少額取引」で実践に移します。
リアルマネーでの取引は、デモトレードとは比較にならないほどの精神的プレッシャーがかかります。まずは失っても生活に影響のない少額で始め、実際のお金が動く状況でのメンタルコントロールを学ぶことが重要です。
複数の手法を組み合わせずシンプルを徹底する
初心者は、チャート上に多くのテクニカル指標を表示させたり、複雑な手法を試したりしがちです。
しかし、情報が多すぎると判断に迷いが生じ、エントリーのタイミングを逃す原因になります。
まずは「移動平均線だけ」「ローソク足のパターンだけ」など、できるだけシンプルな手法を一つ決め、それを徹底的に使いこなすことを目指してください。
取引記録をつけ、検証と改善(PDCA)を繰り返す
取引を行ったら、必ず「取引ノート」をつけましょう。
いつ、どの通貨ペアで、なぜエントリーしたのか?
どこで決済(利食い・損切り)したのか?
その取引の結果はどうだったか?
これらを記録し、週末などに振り返ることで、「このパターンは勝ちやすい」「この時間帯は負けやすい」といった自身の傾向が見えてきます。
この検証と改善(PDCAサイクル)こそが、手法の勝率を高めていく唯一の方法です。
FXの手法を活用する上での重要な注意点
最後に、どんなに優れた手法を使うとしても、必ず守るべき重要な注意点があります。
100%勝てる「聖杯」は存在しない
FXの世界に、100%必ず勝てる魔法の手法(聖杯)は存在しません。
どれだけ精度の高い手法でも、必ず負ける(ダマシに遭う)ことがあります。
重要なのは、1回1回の勝ち負けではなく、トータルで利益を残すことです。
「勝率100%」や「絶対勝てる」といった謳い文句の商材やツールには絶対に手を出さないでください。
※多分詐欺でしょう
必ず「損切り(リスク管理)」をルールに組み込む
手法において、エントリーのルールと同じくらい、あるいはそれ以上に重要なのが「損切り」のルールです。
損切りとは、価格が予想と逆の方向に動いた際に、損失を一定額で確定させることです。
「そのうち戻るだろう」と損切りを先延ばしにすると、損失が際限なく膨らみ、再起不能なダメージ(強制ロスカット)を受ける可能性があります。
「エントリー価格から〇〇pips逆行したら損切りする」「移動平均線を下回ったら損切りする」など、エントリーと同時に必ず損切りのルールも設定することを徹底してください。
経済指標発表時など、手法が機能しにくい時間帯を知る
テクニカル分析は、平常時の投資家心理を反映するものですが、市場の前提が覆るような大きなニュースが出た時は機能不全に陥ります。
特に、米国の雇用統計や各国の金融政策(政策金利)の発表時は、価格が予測不能な乱高下をすることが多く、テクニカル分析の手法が通用しません。
こうした重要な経済指標の発表スケジュールは事前に確認し、その時間帯は取引を控える(ポジションを持たない)のも、リスク管理の立派な手法の一つです。
(Q&A統合)FXをやってはいけない曜日は?
市場の流動性(取引量)が極端に低い時間帯も、手法が機能しにくく、価格が不安定になりやすいため注意が必要です。
- 月曜日の早朝(市場オープン直後)
土日のニュースを反映して価格が飛ぶ(窓開け)ことがあり、スプレッドも広がりやすい。 - 金曜日の深夜(市場クローズ間際)
週末のリスクを避けるためにポジションを決済する動きが活発になり、値動きが荒れることがある。
絶対に「やってはいけない」わけではありませんが、これらの時間帯は初心者のうちは避けるのが賢明です。
FX手法に関するよくある質問
まとめ FXはシンプルな手法から始めて自分だけのルールを確立しよう
FXで利益を上げ続けるためには、一貫した「手法(取引ルール)」が不可欠です。
本記事で解説した内容をまとめます。
- 手法は3要素で構成
「取引手法(順張り/逆)」「取引スタイル(時間軸)」「分析方法(テクニカル/ファンダ)」を組み合わせる。 - 初心者は「順張り」から
相場の流れに乗るシンプルな手法から始めよう。 - スタイルは生活に合わせる
忙しい人は「スイングトレード」、時間がある人は「デイトレード」がおすすめ。 - 分析は「テクニカル」から
まずはチャート分析を学び、移動平均線などシンプルな指標を使ってみよう。 - 「損切り」こそ最重要
エントリーと同時に必ず損切りルールを設定すること。 - 「聖杯」はない
100%勝てる手法は存在しない。検証と改善(PDCA)を繰り返すことが全て。
まずはこの記事で紹介したシンプルな手法をデモトレードで試し、自分に合った「マイ・ルール」を確立することから始めてみてください。